〒248-8686神奈川県鎌倉市御成町18-10(鎌倉市役所内2階)
TEL:0467-23-3000
皆さんが安心して暮らせる住みよい鎌倉市、環境・平和・福祉の鎌倉市を目指して
議会での質問等

2016年7月26日

鎌倉市文化財専門委員会が隧道の尾根の文化財的価値を認め、 史跡に追加指定も求める

—文化財専門委員会を傍聴してー

赤 松 正 博

文化庁の指導的助言により7月8日、鎌倉市文化財専門委員会は、外部有識者として委嘱された2人を加え、9人の出席で開かれました。

会議は、都市整備部道路課、教育委員会文化財部文化財保護課よりこれまでの経過説明が行われた後、当該地についての検証が行われ、全委員から「文化財的価値がある」とそれぞれの立場からの発言がありました。

ここでは、委嘱を受けた外部有識者の発言概要を紹介します。

藤原 良章氏 青山学院大学教授(日本中世史)

・「部分的に壊されたことにより、全体の価値がない」と言うのであれば、円覚寺自体が文化財的価値がないことになる。

・「円覚寺境内絵図」の出っ張り(結界ですが…)少々削られたとしても、中世の円覚寺を思い起こす非常に大きな材料になる。

・少なくとも尾根自体は史跡として指定されてしかるべきもので、是非とも残すべきです。

・安全性は専門的に検討して、文化財は大事にしてほしい。

五味 文彦氏 東京大学名誉教授(日本中世史)

・史跡指定をするとき、ここの尾根がなぜ指定から外れたのか?おそらく地権者の同意が得られなかったからではないだろうか?後世には必ず同意が得られるように努力すべきである。

・史跡指定範囲の根拠は「円覚寺境内絵図」に基づいて、(当時の)裁判所で絵図に花押をつけて境界を決めたものが元になっている。だからこそ価値があるということです。江戸時代の図とは全く性格が違うのです。

・トンネルは近代になってできたもので、なれ親しんだ風景だが、単なる風景ではなく文化的景観です。そこに住んでいる人々の生活に溶け込みながら癒しの場になったりする風景で、これは大事にしなければなりません。

・道路や安全性の問題もありますが、安全性を追求しながら史跡の保存も追求することが大切です。

・文化財保護の視点から、この尾根を史跡の追加指定にもっていくことが歴史的文化的な意味合いを持つことになります。

全委員から尾根の価値を評価する意見表明されたのを受け、河野眞知郎会長が「ここの尾根は円覚寺境内の史跡から外れているが、国の重要文化財『円覚寺境内絵図に』描かれていて、文化的価値がある」と結論付け「隧道の安全性の確保は光学的に手を尽くして、工法その他を検討してほしい」とまとめました。

歪められ、改ざんされた文化財専門委員会の会議記録(2014年7月)

市が隧道の安全対策を開削工法で行うと決めたのは、当時(2014年7月)の専門委員会終了直後でした。

市長は、テレビ取材等にも文化財専門委員の意見の一部分をとって「死守しなければならない史跡ではない」と、開削の理由の格好の材料としてきました。

そこで、先の7月8日の委員会で東大史料編纂所の高橋慎一郎委員は、資料として用意された当時の会議録を指し、「『安全対策との兼ね合いだと思う。死守しなければならない史跡ではない』それはあり得ません。」『安全対策との兼ね合い』はとばされてしまって、『死守しなければ…』だけが独り歩きしています」と。そしてこの発言が開削方針を決める根拠にされていることに不快感を示し、「自分の言葉たらずは反省しています。」と述べたうえで、当該尾根の重要性をあらためて指摘し、史跡への追加指定の努力を市へ要望されました。

このように委員の発言が行政の都合のいいように利用されたことは許せません。またこれだけにとどまらず、会議録の改ざんも行われていました。

本来、文化財専門委員の会議録は文化財保護課が行うものですが、トンネルの安全策を協議する会議にはなぜか道路課が作成した会議録が出されました。しかもその会議録は、委員の重要な発言がカットされたり、他の委員の発言を付け足すなど、意図的に改ざんされたものでした。

このような不正を犯してまで開削を推し進めようとする行政の目的はなんだったのか、改めて問われなければなりません。

市は専門委員会の総意に沿い、尾根を保存し、

歴史的文化的景観保全に転換すべきです

文化庁の指導により、外部有識者を加えた文化財専門委員会の改正が開催されたのは、3年に及ぶ住民の皆さんの粘り強いたたかいと、これと一体となった学者・研究者の方々の努力の結果でした。

松尾市長らは15日(金)文化庁に出向き、専門委員会の意見を伝え、協議した模様で 私たちのたたかいで、あらたな可能性がきり開かれたいま、安全と文化的景観の両立を願うすべての人々の力を結集して、「歴史と共生するまちづくり」を進めていかなければなりません。円覚寺北尾根の保全、隧道の保全に勇躍して取り組みましょう。私も、みなさんとご一緒にひきつづき全力をあげて頑張る決意です。

〈追記〉

上記のとおり、15日(金)の文化庁との協議を受け、市の動きが慌しくなっています。

連休明けの19日(火)には、市議会に対し、この間の状況報告の打診があり、21日(木)午後4時10分より、市議会各会派代表者会議の開催、25日(月)午後2時より市議会全員協議会開催予定の通知がありました。これに関連して、地元・北鎌倉の町内会長等をメンバーとする安全対策協議会の開催通知が市道路課より、議会全員協議会終了後の午後4時からの日程で連絡が入っているようです。

2名の外部専門委員をはじめ、文化財専門委員全員が、結界尾根の文化財的価値を認め、さらに史跡として追加指定を要望した意味は実に大きなものがあります。

この専門家の総意を重く受け止め、隧道の開削方針をただちに撤回し、「歴史と共に共生するまちづくり」にふさわしい隧道の安全と景観の両立に真剣に取り組むことを、市と市教育委員会に対し強く求めていきたいと思います。

記 2016 . 7 .17

新着情報

過去記事一覧

  • 赤旗新聞
  • JCPWEB
PAGE TOP