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福島町議会の議会改革 ~ 議会基本条例について ~

共産党市議団の会派視察として、11月11日(木)に北海道福島町議会の議会改革の取り組みについて調査・懇談してきました。福島町議会からは平野議長、金沢副議長、木村議運委員長、滝川総務常任委員長と石堂議会事務局長が対応してくれました。いま、鎌倉市議会でも議会改革の具体的取り組みの方向について議論をしている最中であり、町レベルではトップクラスといえる福島町議会の改革・議会基本条例の内容は、市議会における今後の検討にも大変参考になると強く思いました。また、事務局任せではなく議員自らが対応して、こちらの質問に責任をもって答える姿勢にも学ばされました。

福島町議会では、10年来の議会改革の取り組みを踏まえ、平成21年3月に議会基本条例を制定(修正可決)しました。「しっかりと討議する議会」「町民が実感できる政策を提言する議会」「わかりやすく町民が参加する議会」を中心理念に、二元代表制の一翼として首長との緊張関係を維持しながら、政策の立案・決定・執行・評価(監視)における論点や争点を明確にし、町の善政を互いに競い合い(善政競争)、また協力もしながら町政を運営することが基本に据えられています。

福島町で議会改革を進め、議会基本条例の制定・実施に至る大きな推進力になった理由の一つは、溝部議長(前議長)の熱意とリーダーシップがあったことで、推進役の存在が大きかったそうです。もう一つは、人口減少・流出が急速に進む(この30年間で人口が半減した)なかで、議会として十分なチェック機能を発揮できず行政の追認機関に甘んじてきた責任が、議会改革を進めていく大きな動機になったようです。

制定過程では、議会運営委員会で議論・検討をしてきましたが、町長との関係や議長選挙の影響などから賛否が分かれ(本会議では賛成7、反対4)、現在に至るまで大変苦労されているとのことです。議員間のスタンスや考え方の相違があるなかで、実践をしながら如何に議員全体の取り組みにしていくのか、鎌倉においても全体の合意形成を丁寧に図っていくことが大事なポイントの一つであると感じました。

 鎌倉市議会でも検討すべき特徴的な項目

以下、鎌倉市議会でも検討すべき特徴的な項目を幾つか述べたいと思います。

まず、条例第3条(通年議会)についてです。「議会が本来有する自律性により主体的・機動的な活動を展開するため、議会・議員活動の基本となる会期を通年とする。」旨が定められています。これにより会期を年度毎(4月~3月まで、条例規定)とし、定例会議は年4回、それ以外は随時開催とのことです。通年議会にした効果としては、特に委員会の所管事務調査が活発になったとのことです。開会中・閉会中の概念がなくなったことにより、本腰を入れた委員会の調査活動がやりやすくなるという点や、議会活動の活性化という点から積極的に検討すべきであると考えます。

次に、条例第8条(町長等と議会・議員との関係)の6項に「町長等は、議員の質問に対して論点、争点の明確化を図るため反問することができる」、という規定で反問権のことです。議会改革の中心テーマは、合議制の議会がいかに議論を深め、政策提案や監視機能の向上を図っていくかにありますが、同時に首長などの理事者との議論もより深めていくことが重要と思います。そうした点で、反問権の行使というのは、質問者と理事者が「同じ土俵」で議論することにつながり、お互いが「すれ違い」の議論を抑制するという意味からも積極的な意義があると考えるものです。

次に、条例第9条(町長による政策形成過程等の説明)で「町長は、議会に政策等(計画、事業等)を提案するときは、内容をより明確にするため」、政策形成に係る資料を提出するとの規定は、議会の監視・チェック機能の向上という点で重要であり、さらに条例第11条(議決事件の拡大)で、代表機関である議会が町政の重要計画等の決定に参画する観点と、首長との関係で議会が議決責任の役割を果たすという観点から、自治法第96条の議決事件を大幅に拡大していることは注目すべき点です。

つまり、政策形成過程での議会の関与(政策執行過程ではない)を明確にしたうえで、議会が自治体の重要計画の議決に責任をもつ規定を定めたことにより、議会の立法機関の位置づけが強化されたことになります。福島町議会では、総合計画から都市計画、住宅計画、福祉計画、介護計画、次世代育成支援計画、地域防災計画など12の主要計画を議決対象にしたことにより、議決にあたり議会が相当な調査・検討を行なわなければならないことから、委員会の所管事務調査を活発に行っているとのことです。

当然、各議員もかなり勉強しなければならず、事務局体制の不十分さもあるなかで、ここまで議決事件を広げることが実態としてどうなのか、課題があると感じましたが、議会が本来果たすべき役割という意味では、当然、目指すべき方向であると思います。また、議会として重要計画の議決に責任をもつという役割を負うのですから、年4回の会期では全く足りなくなります。そこで必然的に、通年議会に改め、調査・検討の場である委員会を日常的に開催する環境をつくることになると考えるものです。

 議会として、議員間の自由討議による合意形成が最重要

そうした審議・検討を行うためにも、最重要なのが、条例第23条(自由討議による合意形成)です。「議員相互の自由討議を中心に議論を尽くして、少数意見を尊重しながら合意形成に努め、町民に対する説明責任を十分に果たす」、2項で「議員は、前項による議員相互の自由討議を拡大し、政策・条例・意見等の議案提出を積極的に行う。」と規定しています。福島町では、現状、委員会審査の際に行っており、行政部局との質疑の後、討議時間を設けて議員間の議論を公開(休憩はとらない)で行っているとのことです。さらに本会議での議員間討議について検討しているとのことですが、少なくとも実質審議の場である委員会での議員間の議論は、合議制である議会の機能を発揮する点では必要不可欠な取り組みであり、鎌倉でも具体化していかなければなりません。

その他にも、議員の自己評価制度や議会の付属機関の設置規定、議会図書室の充実・公開など注目すべき項目があり、大変勉強になりました。ぜひ鎌倉の議会改革に活かし、市民に開かれた議会づくりに改めて取り組んでいきたいと強い決意をしたところです。最後に、私が道職員になってケースワーカーとして最初に担当した地域である福島町で、先進的な自治の取り組みが意欲的に行われていることに大きな刺激を受けました。(高野洋一)