賃金削減で経済・財政は良くなるか
先日、国の累積債務残高が900兆円に達したという新聞記事を読みました。とてつもない額で対GDP比は200%近くに及んでおり、明らかに日本の財政は黄信号から赤信号へと危機感を深めています。その一方で、なぜこんな異常な規模に借金が膨らんだのか。どこに問題があったのか、きちんとした分析がされないまま「財政難で大変だ」という危機感を煽る主張や報道だけが先走っているように思います。
そうしたなかで、消費税の増税や公務員給与の大幅削減が議論されており、国民・市民の少なくない人々が、こうした考え方に(積極的か消極的かは別として)肯定的になっている状況があります。「社会保障のためには仕方がない」「国民が大変なのに公務員は高い給与をもらっている」などの意見で逆らいがたい流れであるかのようですが、本当にそういう方向で日本の経済・財政が良くなり、私たちの生活が良くなるのでしょうか。
「悪循環のサイクル」を延々と繰り返している
この度だされた人事院勧告は2年連続の賃下げ勧告となりました。仕方がない、の一言で片づけてしまえばそれまでですが、民間・公務問わず、一体どこまで給与を削減すれば適正であると考えるのでしょうか。いうまでもなく、GDPの約6割は「個人消費」です。その大部分を占めるのは給与・賃金と年金などの社会保障給付です。経済・財政を支えるうえで、個々人の所得や消費が最も大きい要素であるということです。
ところが、経済・財政が苦しいから公務員給与を賃下げする、それが民間にも波及して給与水準が抑えられ個人消費は伸びない。そうするとモノが売れず、結局、生産(供給)が落ち込む。結果、国・地方ともに税収が落ち込み、更なる財政難になる。それでも公務員は安定していて民間よりも良い、もっと削れ。こういう「悪循環のサイクル」を90年代以降、延々と繰り返しているだけではないでしょうか。
この点に関して「連合」は、人勧の賃下げによって、「中小企業や地場産業の労働条件にも影響を与えることが予想され、内需拡大の必要性が指摘されているにもかかわらず、勤労者所得が低下し、景気や地域経済をさらに停滞させていくことは必至」と指摘していますが、全くそのとおりであると思います。こういう議論をすると、よく「労働組合寄り」などと批判がされますが、勤労者の所得が下がって経済が良くなるはずがありません。
鎌倉市職員の給与は「日本一高い」? 単純な議論では「共倒れ」に
最近、鎌倉市職員の給与は「日本一高い」という話題で、よく聞かれることがありますが、一面的な見方をしてはいけないと思います。まず、これは相対的な比較であり、1位=高い、とは単純にいえません。財政健全化法などの縛りにより、この間、全国の自治体で急激に職員減や給与削減が進められているわけです。それを1位だから高いという論法は、(市民には分かりやすいのですが)余りに単純化した議論であると言わざるを得ません。
また、全国の自治体が給与削減しているなかでの相対的な比較ですから、公務員給与の「あるべき水準」(当然、自治体の規模・財政状況などによって違いがでてきます)が全く議論になっていないということです。どういう給与水準が鎌倉市の財政状況などから適正なのか、という議論がないまま、自治体間比較だけで議論していくと「低ければ低いほど」良いということになってしまうのです。
公務員の給与だけが下がり続け、それと関係なく民間の勤労者所得は上がり経済状況は良くなっていく、こんなことは有り得ないのです。原点に返って、本当の無駄遣いが国政上どこにあるのか(大型公共事業と軍事費)、税の原則を踏まえ、税金は本来、どういう所得階層から厚く納めてもらうべきなのか(高額所得者と巨額の利益を上げている企業)。これまでの「流れ」や「認識」を根本的に改める必要がある、このことを率直に訴えていきたいと思います。




