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2023年度鎌倉市予算関議案に対する 日本共産党鎌倉市議団態度

日本共産党鎌倉市議会議員団を代表して、議案第88号 令和5年度鎌倉市一般会計予算議案第90号 令和5年度鎌倉市国民健康保険事業特別会計予算議案第94号 令和5年度鎌倉市下水道事業会計予算議案第95号 鎌倉市深沢地区まちづくり委員会条例の制定議案第99号 鎌倉市子ども会館条例を廃止する条例の制定、及び議案第103号 鎌倉市都市公園条例の一部を改正する条例の制定について反対、他の議案は賛成の立場で討論に参加します。

3年に及ぶコロナ禍の先行きは未だ見通せず、ロシアのウクライナ侵略による影響等で日本の国内にも物価高で生活や営業に大きな負担が生まれているなかで、自治体として果たすべき役割が改めて問われていると感じています。予算特別委員会では、財政調整基金について質疑しましたが、令和4年度における歳入見通しが当初から大きく上回ったことによって基金残高が大幅に増えることは理解するものです。同時に、事実として適正規模の2倍となる80億円に及ぶのであれば、それは市民を支える生活支援や交通費の補助をはじめ福祉の充実など可能な施策がもっとあるし、それは財政的に可能であることを示しているといえます。議案第97号の小児医療費の助成に関する条例改正により、鎌倉市が18歳まで所得制限なしで助成を拡大することは、一貫して制度の充実を求めてきた立場から当然賛成するものでありますが、それでもなお、鎌倉市の財政力を考えると予算全体として市民の暮らしを支える視点が不十分であると言わざるを得ません。

その一方で、後でも触れますが、深沢地域整備事業や本庁舎移転事業といった百億円単位の大型開発事業の推進には積極的であり、むしろ現在の社会状況下で財政的リスクも考えれば、これらの事業こそ、事業の是非や時期を含めた慎重な姿勢が求められますが、予算案においては前のめりで冷静さをかいているように見受けられます。

令和5年度からは、コロナ対策での国からの補助金メニューなどがなくなる、もしくは縮小されます。物価の高騰は40年来で最大といわれており、日常生活にかかるほぼすべてが物価高となっています。中小零細の事業者は、10月からのインボイス制度や、政策金融公庫への返済でまた苦しめられ、物価高騰の下で実質年金は引き下げられ、生活保護世帯も増えました。

こうした時に地方自治体は、国の動向をみてからではなく、市民の生活、財産、命を守るという役割を発揮しなければならないのではないでしょうか。今年度鎌倉市は、いくつもの値上げを提案していますが、この時期に行政のやることとは思えません。

そのうえでまず、議案第88号 令和5年度鎌倉市一般会計予算に関する意見を述べます。

●「公共施設再編計画」の見直しを令和5年度に行うとしていますが、今の現状や市民の思いを反映した現実的かつ実態を伴った計画に改めるよう求めるものです。再編計画は、市内の公共施設のすべてを視野に入れた計画なので、市民目線で施設の場所をどういう所に配置するかは重要です。特に、支所は地域コミュニティの拠点として地域と連携を図っており、地域支援の中心を担う存在となっていることから、腰越と玉縄の廃止ではなく、支所機能の充実を図ることを求めます。また、再編計画の見直しに当たっては、まちづくりの視点から支所のある5行政区ごとに市民の意見をとり入れながら検討すべきではないでしょうか。

令和5年度には「学校整備計画」も同時に策定予定ですが、いうまでもなく小中学校の老朽化対策は最重要課題の一つです。同時に、社会が速いスピードで変化し複雑化するなかでの学校のありかたを考える上で押さえておくべきは、学校が学びの場であるということです。その点で、公共施設の選択と集中により「拠点校」にいくつもの施設を併設することは、今後の学校の可能性や望ましいあり方に照らして、新たな問題が生じないか、心配です。公共施設再編計画の見直しにおいて「拠点校」方針を採用しないよう求めるものです。「学校整備計画」の検討は、そうした変更を視野に入れて基本的な方針を見直し、しっかりと学校の機能を保ち、将来を見通せる検討スキームとするよう求めます。

●次に、本庁舎等整備事業について申し上げます。市役所の位置条例改正案の否決は、議会の過半数ではなく、特別多数議決による大変重要な結果です。市長は年頭に、位置条例は6月以降の定例会に再提出する意向と発言していますが、市民の中にある計画の見直しを求める声は、位置条例の否決後わずか半年先に再提出できるほど、軽いものではありません。ともかく市民意見を聞く機会を設けたのですから、将来に禍根を残すことのないよう、計画の見直しを求めます。

また、位置条例の否決を受け、予算面において基本設計費の計上を見送ったことは当然であり、既に代表質問の答弁で確認しましたが、今後、位置条例の可決なしには設計予算の提案は行わないとのことです。これは位置条例との関係で予算面に一定の制約がかかったものと理解しますが、それなら新年度に3億円もの基金積立を行う必要もなく、そのことも基本設計費と同様に計上を見送るべきだったのではないでしょうか。

なお、市長は、新庁舎を災害時の防災拠点として整備を急ぐとしていますが、仮に災害がおきたとしても、支所を含めた市役所機能の継続を示している「地震災害時業務継続計画」が策定され、それに基づく対応が現に行われているのですから、移転を急がないと市役所機能が確保されないかのような一種の「脅し文句」を市民に言うべきではありません。自らが策定した行政計画の否定になります。移転する・しないに関わらず、地震災害時の機能はきちんと確保し、きちんと取り組んでいきます、というのが市民に対する当然の責任ではありませんか。移転を正当化したいがために、業務継続計画に基づいて果たすべき行政責任を否定するような物言いは本末転倒です。全国的にみれば、開発事業の見直しを行っている自治体もあるほど資材の高騰による費用の増加が見込まれているのだから、いまいちど立ち止まる必要があるのではないでしょうか。

●次に、深沢まちづくり計画についてであります。大船東口再開発が物価高騰を理由にして2013年以降ストップしたままですが、一方で、深沢地域整備事業については村岡新駅と一体で進めようとしています。

昨年12月、深沢まちづくり区画整理事業費が59億円増加するとの報告がありました。しかし未成熟な情報であるという理由により、積算根拠数字も市民に明らかにされていません。未成熟な情報で59億も増えるということは 今後さらに膨らむ可能性を指摘しました。

村岡新駅を建設すれば、深沢地区区画整理事業用地が高く売れ、村岡新駅の事業費は4億で済む。まさに取らぬ狸の皮算用であり、もし思惑通りに売れない場合は市民の税金が投入されることになります。市民が望まない村岡新駅との一体的まちづくりでなく、市民本位の深沢のまちづくりにすべきであります。

学校給食の無償化について述べます。文部科学省は学校給食を、学校における食育の生きた教材としています。鎌倉市においては、学校給食費の無償化は、財源の確保が課題であると答弁し、さらに給食の無償化は、行政の政策として取り組むことができることを明らかにしました。 

すでにオーガニックの食材費の保護者負担を軽減しています。学校給食法は自治体が給食費を負担することを禁止した趣旨ではないことを明らかにしています。全国的に無償化の動きが現に広がっており、財政力からも可能なのですから、前向きな検討を求めます。

●福祉の充実という点では、やはり高齢者の外出支援が大切です。運転免許返納者だけでなく、65歳以上の希望する方に補助を広げること、また2年間ではなく継続的な事業にし、補助額も可能な限り充実することを改めて求めます。財政が厳しいなどという言い訳はもうできなくなったのですから、やらない理由はもはやないはずです。

●次に、高齢者の聞こえの支援についてです。認知症の予防や健康で豊かな老後を過ごす上で、難聴に対する市の更なる踏み込んだ取り組みは必要です。補聴器購入補助の検討を要望してきましたが、第9期鎌倉市高齢者保健福祉計画の策定に向けて、労働安全衛生法で行っている聴力検査と同様の「聞えの検診」の実施など、高齢者の聞こえに関する支援を位置づけることと補聴器購入補助の検討を要望します。

●次に、「議案第90号 令和5年度鎌倉市国民健康保険事業特別会計予算について」です。

鎌倉市の国民健康保険料の滞納世帯は2300世帯におよび、今回の保険料の値上げによって、さらに滞納者を増やしかねません。国民健康保険の加入者は、年間200万円以下の低所得者が6割を占めているからです。払える保険料にするため、市は対策を講じるべきではないでしょうか。

法定外繰り入れには2種類あり、ペナルティが科せられる「決算補填等目的」の法定外繰り入れと、科せられない「決算補填等以外の目的」の法定外繰り入れがあります。名古屋市では、ペナルティが科せられない法定外繰り入れと、国保料算定の基礎となる所得額について、独自の控除制度を設け、所得割の負担を軽減しています。こうした他の自治体の取り組みも参考にして、払える保険料を検討してください。

●次に、「議案第95号 鎌倉市深沢地区まちづくり委員会条例の制定について」申し上げます。深沢まちづくりガイドラインは、村岡新駅を前提としたものであり、議案第95号で新たにつくられる深沢地区まちづくり委員会は、ガイドラインを引き継ぎ、さらなる具体化をはかるために設置されます。村岡新駅と一体の大規模開発のまちづくりには反対します。

●「議案第99号 鎌倉市子ども会館条例を廃止する条例の制定について」申し上げます。鎌倉市の子ども会館は、子どもたちの健全な遊び場、乳幼児から中学生までの異年齢の交流ができる場所でした。ところが、学童保育の待機児童対策と称して放課後子どもひろばに置き換え小学校区に1カ所設置されたため、子ども会館が次々に閉館となり、学区の小学生以外はこれまでの居場所がなくなりました。若者の居場所づくりが大切であり拡大しようとしていますが、一方で居場所をなくす方針は矛盾しているのではないでしょうか。今後、深沢整備事業用地に青少年の居場所を確保することを求めます。

●「議案第103号 鎌倉市都市公園条例の一部を改正する条例の制定について」です。笛田公園のテニスコートと野球場の使用料の令和6年からの値上げは、令和3年に策定された「公の施設における使用料等の算定基準」に基づくものです。他の公の施設もこの基準に基づいて使用料が改定されてきたとはいえ、この時期に値上げする理由は、順番が来たからということですが、算定基準では、「その他考慮すべき事項」として、社会状況の変化があげられています。物価高が収まる気配のない今日、値上は極力行わないという考えはなかったのでしょうか。

●「議案第94号令和5年度鎌倉市下水道事業会計予算」では、コロナ禍が収まらない令和5年度の4月1日から、下水道使用料が全面的に値上げになります。

施設の老朽化、災害対策として、インフラ整備の必要性は理解するものの、ただでさえコロナ禍で生活困窮者が増えており、物価の上昇が続くこの時期の値上げは、憲法の生存権に関わる問題です。現在ある減免制度対象にならない低所得者への減免措置をすることなどを求め討論を終わります。